自分だけが知ってるという優越感。
weak point
「隊長、これ今日の会議の資料です。」
午後の定例集会が終わって、乱菊は自らが所属する十番隊の詰め所に戻り、執務室に入った。
そこには、一足早く別の仕事から帰ってきていた十番隊隊長の姿があった。
「早かったですね。」
お茶入れます、と云いながら乱菊は持っていた資料を彼女の上官に手渡す。
「おう。今日はまたずいぶんと長い会議だな。」
云いながら資料を受け取った日番谷の手が、乱菊はふと気になった。
「隊長、怪我されましたでしょう。」
お盆に二つ湯呑み茶碗を載せた乱菊が急騰室から戻って来た。その視線は日番谷の左手に向けられている。
「ん?ああ…」
云われて気が付いた。そう云えば何となく痛い、と手のひらを開いて見ると、まめが潰れて血が滲んでいた。
「隊長は刀、握り過ぎなんですよ。成長期だから、皮が柔らかいのね。」
はいどうぞ、といって彼の文机に湯呑み茶碗を置いて、開かれた手のひらを見つめた。
小さいけれど、この手が十番隊を支えている。
「一応、絆創膏張っておきましょうか。」
乱菊はそう云うとどこに持っていたのか、絆創膏を取り出した。
「別にほっときゃ治る。」
いいって、と云う日番谷の手を、駄目です、と取った。
「…隊長、左手の手の人差し指に、黒子ありますよね。」
ぺり、と絆創膏を貼りながら乱菊は微笑む。
「……よく見てるな。」
「時々そういうことが、何となく嬉しくなるんですよ。隊長の秘密を知ってるのはあたしだけだー、って。」
はい出来た、と云って乱菊は自分の机に盆を乗せた。
「………なんだそれ。」
日番谷の顔が赤くなったのを、積み上がった書類だけが知っていた。